「新しいタイプの商標」のその後

我が国の商標制度に「新しいタイプの商標」の保護制度が導入されてから、今年で10年目を迎えようとしています(施行日は2015年4月1日)。保護が認められる商標のタイプは、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標の5種類であり、このうち、最も登録件数が多いのは音商標で、次いで位置商標、動き商標、色彩のみからなる商標、ホログラム商標の順となっています(2025年3月5日時点でのJ-platPatの検索結果)。

ところで、我が国において未だ認められていない商標のタイプとして、匂い、味覚、触感があります。このうち、匂いの商標(Scent Mark)については、米国、欧州、豪州では従前から登録が認められており、例えば、サロンパスで有名な久光製薬が、米国において第5類の商品(治療用の貼付剤)を指定した匂いの商標を2009年に登録しています(US Serial No. 77420841)。なお、匂いの商標出願には「商標の説明」が必要であり、久光製薬のケースでは以下のような記載になっています。

Description of Mark:

The mark is a scent mark having a minty scent by mixture of highly concentrated methyl salicylate (10wt%) and menthol (3wt%).

一般に、匂いや味覚などは個人によって感覚に差が生じやすく、類似範囲の認定も容易ではないと考えます。万一、権利侵害の問題が生じた場合、客観的な証拠の収集にも困難が伴うものと想像します。

なお、我が国において認められていない匂いなどの商標に関する特許庁の見解(Q & A 形式)は以下の通りです。

Q1-12 「におい」や「味」等の今回の法改正では保護対象とならなかった商標について、今後保護対象に追加されることはあるのでしょうか?

A 「におい」等の商標については、諸外国での登録事例も少なく、現時点では我が国企業等のニーズも高くない状況です。今後の新たな保護対象の追加については、国際的な動向や我が国企業等のニーズを踏まえて、保護の在り方を検討する予定です。

<特許庁資料より引用>

新しいタイプの商標の保護制度に関するQ&A

https://www.jpo.go.jp/faq/yokuaru/trademark/new_shouhyou_faq.html#anchor1-12