中国江蘇省の蘇州市内にあるカフェがウルトラマン関連の知的財産権を侵害したとして、同カフェに対し、40万元(約820万円)の損害賠償金の支払いを命じる判決が言い渡されたというニュースがありました。カフェの店内にはウルトラマンのフィギュア、カード、ポスター等が並べられ、内装や食器類にもウルトラマンの要素が取り入れられていたことに加え、インターネットでウルトラマン関連の情報を発信するとともに、BGMでもウルトラマンシリーズのテーマソングを流し、さらには、ウルトラマン関連の商品販売も行っていたとのことです。蘇州市の人民法院(裁判所)は、被告が原告の展示権、複製権、頒布権および情報ネットワーク伝達権を侵害していたとする判決を言い渡すとともに、客がこのカフェで販売される商品をウルトラマン関連の商品と誤解し、さらにはウルトラマン公式の認可を受けたカフェであると錯覚するおそれがあったとして、被告にはキャラクターの知名度に便乗する意図があり、不正競争行為に該当すると認定したとのことです。
ところで、漫画、アニメ、ドラマ、映画等のキャラクター自体は著作物ではありません。著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されており(著作権法2条1項1号)、最高裁の判例でも、キャラクターは「具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということはできない」と判示されています(ポパイネクタイ事件、最判平成9年7月17日)。
ウルトラマンというキャラクター、すなわち、特撮テレビドラマの作中に登場する巨大変身ヒーロー(M78星雲から来た宇宙警備隊員)は、あくまで「抽象的な概念」またはイメージであり、それ自体は著作権法の保護を受けることはできませんが、例えば、ウルトラマンというキャラクターを描いたイラスト、ウルトラマンを題材とする漫画やテーマ曲はそれぞれ「具体的表現」物として著作物に該当し、著作権法の保護対象となります。
なお、上記事件のような度を越した侵害行為とは別に、キャラクターに関して起こりがちな侵害問題としては、無断でキャラクターのデザインを利用したパンや菓子などを販売する行為が挙げられます。もちろん、著作権者の許諾を得ずに、このような行為をすることは著作権法違反です。過去にも、無許可で人気アニメ「それいけ!アンパンマン」のキャラクターを利用した人形焼を移動販売車で売った露天商が著作権法違反で書類送検されたというニュースがありました。
私的使用(例えば、自宅でキャラクターを利用したパンや菓子あるいは弁当などを作り、家族にふるまうなど)の範囲を逸脱した行為は著作権法にふれるため、くれぐれも注意が必要です。