すでに解散した福岡県の任意団体が使用していたドメインを第三者が再利用し、当該団体に似せたホームページを作成しているとして、同県がアクセスしないよう呼びかけるとともに、プロバイダに対して削除要請を行う方針であるとのニュースが報じられました。同県の発表によれば、対象となるドメインは当該団体が2021年4月末まで保有し、HPの閉鎖に伴い廃止したとのことで、昨年12月、当該団体に関する問い合わせが同県に寄せられたことから、再利用が判明したとのことです。
ところで、ドメイン名とは、「インターネット上に存在するコンピュータやネットワークを識別し、階層的に管理するために登録された名前のこと」です。
<IT用語辞典 e-Wordsより引用>
基本的に、アルファベット、数字、ハイフンなどの組み合わせによって構成されるものであり、ネット上のいわば住所のような役割を有するものですが、社名や商品・サービス名を含むケースもあることから、事業者側にとっても、また、消費者側にとっても、重要な意味を有するものです。企業や商品等のブランドが有する知名度に便乗(フリーライド)する行為や、信用を傷つけるなどの行為が多発していた中で、2001年にドメイン名の不正取得等を不正競争行為として追加する改正法が成立し、同年12月から施行されました。
<経済産業省資料より引用>
不正競争防止法のこれまでの改正について
平成13年改正資料(ドメイン名の不正取得等を不正競争行為として追加)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/kaisei_archive.html#h13
なお、ドメイン名に関する不正競争行為(不競法2条1項19号)の要件は以下の通りです。
①不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的があること
②他人の特定商品等表示と同一もしくは類似のドメインであること
③そのドメインを使用する権利を取得・保有し、またはそのドメインを使用すること
上記の要件を具備する行為が行われた場合には、差止請求や損害賠償請求等の民事的な措置を講じることが可能です。ただし、当該行為は刑事罰の対象とはされていません。これは、不正競争防止法がその法目的の実現手段として、当事者間による民事的な規制を基本としているためであり、需要者に誤認混同を与えるなど、公益の侵害が著しい行為類型のみが刑事罰の対象となります。
ドメインは、原則として誰もが(早い者勝ちで)登録できるものですが、上述の通り、その行為が不正競争行為に該当する場合があります。なお、冒頭のニュースに関しては、不競法の問題とは別に、同県や同団体が著作権を持つ写真が勝手に使用されているなどの問題が生じているとのことです。※写真の著作物に関しては、弊所Blog(2025年2月28日更新)をご参照下さい。