沖縄県那覇市にある政府機関の職員が、写真家の撮影した写真を盗用し、観光ポータルサイトに掲載・公開していたとして、著作権法違反の罪で罰金20万円の略式命令を受けたというニュースがありました。写真家のブログに掲載されていた対象写真には著作権表記があったものの、それをトリミングして使用したとのことです。
ところで、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」であり(著作権法2条1項1号)、以下の通り例示列挙されています(同法10条1項)。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
上記の通り、写真も著作物の例として挙げられていますが、全ての写真が著作物となるわけではありません。もちろん、撮影者がプロかアマチュアかで決まるものではありませんが、具体的にどのような写真であれば著作物と言えるのかは、個別具体的な判断となります。
近時の裁判例(東京地裁 令和5年7月6日)では、発信者情報開示仮処分命令申立事件に関する申立書及びこれに関する書面をiPhoneで撮影したものについて、著作物性が否定されています。その理由として、本件写真の構図が「書面等をその大体の部分が写真の枠内に収まるようにほぼ真上から撮影するというごくありふれたものであり、光量、シャッタースピード、ズーム倍率等についても、原告において格別の工夫がされたものと認めることはできない。そうすると、本件写真は、ありふれた表現にとどまるものであるから、原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず、本件写真が著作物に該当するものと認めることはできない。」と判示されています。
一方、別の裁判例(東京地裁 令和6年11月14日)では、釣り具やアウトドア用品等に関するブランドを展開している原告が撮影した釣り具の各写真について、著作物性が肯定されています。その理由として、「本件各写真の撮影は、本件商品を様々な角度から接写しつつ美しい画像とするために、被写体の配置、背景、光源、カメラアングル等を調整して行われたものであることが認められる。そうすると、本件各写真は、いずれも、撮影者の個性が表れたものといえ、「思想又は感情を創作的に表現したもの」と認められる。すなわち、本件各写真は、「著作物」(著作権法2条1項1号)に該当する。」と判示されています。
さらに、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラなどを使用し、賃貸物件の外観・内観及び周辺環境等を撮影した写真について、「本件各写真の撮影は、賃貸物件の内容を分かりやすく需要者に伝えるため、明るさや撮影角度等を調整して行われたものであること、本件各写真の中には、対象を広く写真に収めるため、パノラマ写真を撮影できるカメラを利用して撮影されたものも含まれていることが認められる。このような本件各写真の内容や撮影方法に照らすと、本件各写真は、被写体の構図、カメラアングル、照明、撮影方法等を工夫して撮影されたものであり、撮影者の個性が表現されたものといえる。したがって、本件各写真は、いずれも思想又は感情を創作的に表現したものと認められ、「 著作物」(著作権法2条1項1号)に該当」すると判断した裁判例もあります(東京地裁 令和6年2月7日)。
すなわち、アマチュアによる撮影であっても、また、スマートフォンなどによる撮影であっても、対象物の構図やカメラアングルなどにおいて工夫があり、創作性が認められれば、著作物性が肯定されることになります。
なお、写真に著作物性が認められる場合であっても、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究、その他の目的上正当な範囲内で行われるもの」であれば、著作権者以外でも引用して利用することができます(著作権法32条1項)。しかしながら、「引用」として認められるかどうかは、裁判所による個別具体的な判断となるため十分注意が必要です。