種苗法上、育成者権者の許諾を得ず、登録品種の種苗を業として増殖・譲渡する行為は、育成者権の侵害に当たります。2024年12月初旬、種苗法違反(育成者権侵害)の疑いで2名が逮捕され、9名が書類送致されたというニュースがありました。具体的には、いちごの登録品種「桃薫(とうくん)」について、育成者権者である農研機構の許諾を得ず、増殖した苗をフリマサイトで販売した疑いがあるというものです。
新たに開発した新品種を品種登録出願して登録されると、品種登録の日から25年(または30年)の期間中、育成権者は登録品種を独占的に利用でき、かつ、同期間中、新品種の名称を独占的に使用することができます。ただし、登録期間終了後、その品種名は一般名称化し、誰でも自由にその名称を使用することができるようになります。
なお、種苗法上、以下に該当する場合には、品種登録を受けることができません。
「出願品種の種苗に係る登録商標又は当該種苗と類似の商品に係る登録商標と同一又は類似のものであるとき」
「出願品種の種苗又は当該種苗と類似の商品に関する役務に係る登録商標と同一又は類似のものであるとき」
一方、商標法上、以下に該当する場合には、商標登録を受けることができません。
「種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であって、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用するもの」
上記事件に係るいちごの登録品種「桃薫(とうくん)」に関しては、すでに品種登録されているため、商標登録を受けることはできません。また、新品種の登録期間終了後も、普通名称であるという理由で商標登録されることはありません。 したがって、種苗法と商標法の両法による保護を受けるためには、普通名称となってもよい名称を品種登録し、一方、独占的に使用し続けたいブランド名を商標登録する必要があります。例えば、商標「あまおう/甘王」(商標登録第4615573号)と品種名「福岡S6号」(品種登録第12572号)のように、商標登録と品種登録を使い分けることが求められます。
商標登録第4615573号「あまおう/甘王」
品種登録第12572号「福岡S6号」
画像出典:登録品種データベース
https://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM112.aspx?TOUROKU_NO=12572&LANGUAGE=Japanese