近年、昭和レトロが若者の間で流行となり、「令和の新ブーム」などと言われ、たびたびテレビ番組でも取り上げられています。その一つの表れとして、昭和時代の懐かしい喫茶店(純喫茶)におけるノスタルジックな雰囲気や、そこで提供される昔ながらのメニューが人気になっています。
ところで、喫茶店をはじめとする飲食店でも、店の名前やロゴを商標として出願・登録することが行われています。その場合、特許庁に提出する願書には、第43類の「飲食物の提供」、「茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」、「カフェテリアにおける飲食物の提供」、「喫茶店における飲食物の提供」、「レストランにおける飲食物の提供」などを指定役務として記載し、出願することになります。
当然のことながら、すでに出願・登録されている他人の商標と同一又は類似関係にある商標は出願しても拒絶されますが、それ以外にも、指定する商品・役務との関係で、識別力が無いと判断される商標も拒絶されてしまいます。
特許庁の『商標審査基準』によれば、店名として多数使用されている商標に関する拒絶理由(第3条第1項第6号)について、以下のように規定されています。
商標が、指定役務において店名として多数使用されていることが明らかな場合(「スナック」、「喫茶」等の業種を表す文字を付加結合したもの又は当該店名から業種をあらわす文字を除いたものを含む)は、本号に該当すると判断する。
(例)
① 指定役務「アルコール飲料を主とする飲食物の提供」について、商標「さくら」、「愛」、「純」、「ゆき」、「ひまわり」、「蘭」
② 指定役務「茶又はコーヒーを主とする飲食物の提供」について、商標「オリーブ」、「フレンド」、「ひまわり」、「たんぽぽ」
<特許庁資料より引用>
『商標審査基準』八、第3条第1項第6号
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/document/index/10_3-1-6.pdf
識別力の有無は時代によってその判断が変わるものであり、かつ、世代間でも感覚に差が生じるものですが、その判断が微妙な場合には、いったん試しに出願してみて、識別力が無い=独占排他性が無いとされれば(他に拒絶理由がないことを前提として)、権利化せずにそのまま使用するということも、時として選択肢の一つになります。