特許庁によれば、2024年12月24日、地域団体商標として「築地場外市場」の文字からなる商標が登録になったとのことです。商標権者は築地場外市場商店街振興組合であり、対象となる役務は第35類の「東京都中央区築地及びその周辺における飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と第43類の「東京都中央区築地及びその周辺における飲食物の提供」です。

<特許庁資料より引用>
地域団体商標登録案件一覧 最新の登録案件(2024年12月27日現在)
商標登録第6879660号 築地場外市場
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/shoukai/ichiran/6879660.html
本来、地名と商品又は役務の名称等からなる文字商標は識別力が無いと判断され、全国的な著名性を獲得しない限り登録が認められないのが原則です。しかし、この原則論を貫徹すると、事業者の商標が全国的に相当程度知られるようになるまでの間は他人の便乗使用を排除できず、しかも、他人に使用されることによって、事業者の商標としての識別力の獲得がより一層困難になるという問題がありました。
このような状況から、2005年の法改正によって成立したのが地域団体商標制度です(施行は2006年4月1日)。当該制度は、地域の産品等について事業者の信用の維持を図り、地域ブランドの保護による地域経済の活性化を目的としたもので、地域ブランドとして用いられることが多い地域の名称と商品又は役務の名称等からなる文字商標について、登録要件を緩和したものです。制度の成立から約20年近くが経ちますが、特許庁の発表によると、2024年12月末時点において781件もの登録がなされたとのことです(ただし、現在も権利が存続しているものに限る)。
なお、地域団体商標の登録要件としては、①出願人が地域に根ざした法人格を有する団体(事業協同組合、商工会、商工会議所、NPO法人等)であること、②団体の構成員に使用させる商標であること、③地域名と商品又は役務の名称等からなる商標であること、④商標構成中の地域の名称と商品又は役務の間に密接関連性があること、⑤日本国内において需要者に広く認識されていることが挙げられます。
このうち、⑤の要件に関しては、全国レベルの著名性までは求められておらず、一定の地理的範囲の需要者間である程度有名であることが立証できれば良いとされていますが、今般登録された築地場外市場に関して言えば、中央卸売市場が豊洲に移転後も数多くの専門店が軒を連ね、依然として人気の高い観光地となっており、需要者による認知度は十分高いものと思われます。