2024年12月20日、日英包括的経済連携協定に基づく地理的表示(GI:Geographical Indication)に関する相互保護の対象産品が改正されました。当改正より、日本の農林水産物および酒類の地理的表示39件が新たに追加され、通算132件の地理的表示が英国において保護されることとなりました。今回追加されたのは、「飛騨牛」や「山形ラ・フランス」などの農林水産物32件のほか、「新潟」や「長野」などの酒類7件です。
<JETRO資料より引用>
日本の地理的表示39件が英国で新たに保護、EUでの相互保護件数と同等に
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/12/9ba46011acf3fd2d.html
そもそも、地理的表示保護制度とは、地域ならではの自然的な要因等の中で育まれてきた品質や社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。同じく、酒類についても、地域の共有財産である産地名の適切な使用を促進することを目的とした地理的表示制度が存在します。なお、農林水産物等の地理的表示は農林水産省の管轄で、登録事例としては「夕張メロン」、「八丁味噌」、「近江牛」などがあります(2024年8月27日時点で148件)。一方、酒類の地理的表示は国税庁の管轄となり、要録事例としては「琉球」、「はりま」、「山梨」などがあります(2024年12月20日時点で27件)。
他方、地理的表示のように、地域のブランドを保護する制度として、地域団体商標制度が存在します。地域団体商標は特許庁の管轄で、登録事例としては「大間まぐろ」、「下呂温泉」、「宇治茶」、「薩摩焼」などがあります(2024年11月29日時点で779件)。ただし、地理的表示と地域団体商標は、保護対象や登録要件など種々の点で相違しています。※以下は、酒類を除いた農林水産物や飲食料品等に関する地理的表示と地域団体商標との比較です。
<特許庁資料より引用>
地域団体商標の権利者及び 地域団体商標の取得を考えている団体のための地域団体商標と地理的表示(GI)の活用Q&A
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/document/faq/t_dantai_syouhyou.pdf
地理的表示(GI)は、知的財産に関する条約である「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」に基づき国際的に保護される知的財産であり、日本の地理的表示法(第1条)においても、TRIPS協定に基づいて特定農林水産物等の名称の保護に関する制度を確立することが明記されています。他方、地域団体商標は日本の商標法に基づき日本国内でのみ保護されるものであり、他国での保護を求める場合には、それぞれの国の法律・制度に応じた手続きが必要となります(属地主義)。
我が国において、地理的表示(GI)制度と地域団体商標制度の双方による保護を希望する場合、保護対象や登録要件などを考慮した上で、それぞれの申請・出願先に手続きを行う必要があります。