2024年12月、日米欧中韓による商標五庁(TM5)の年次大会が開催され、各国の商標手続の調和や改善、ユーザーへのサービス向上等に関する議論が展開されたことに加え、AI等の新技術や変化する商習慣下における新たな商標の課題に対応するため、各庁が引き続き協力を進めていくことが確認されたほか、「悪意の商標出願」をテーマとした意見交換も行われたとのことです。
ここで、「悪意の商標出願」については、商標法上の定義は無く、一般的に他人の商標が当該国・地域で登録されていないという事実を利用して、不正な目的で当該商標を出願する行為を指すとされています。
なお、我が国の商標法上、以下の条文が「悪意の商標出願」と関連して適用されるものと考えますが、なかでも、第4条第1項第7号及び第4条第1項第19号が、より直接的な法的根拠として位置付けられています。
・第3条第1項柱書:当該標章を使用する意思が出願人にあるか否か。
・第4条第1項第7号:公序良俗に反するか否か。
・第4条第1項第8号:他人の氏名等を含む商標であるか否か。
・第4条第1項第10号:他人の周知商標と同一又は類似の商標であるか否か。
・第4条第1項第15号:他人の商品の出所について、混同が生じるおそれがあるか否か。
・第4条第1項第19号:他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用する商標であるか否か。
我が国では、特許庁における審査で上記条文に基づき拒絶される余地があるほか、異議や無効審判においても取消・無効となる可能性があります。なお、不正の目的が認められた場合、除斥期間の適用は無く、「悪意の商標」はいかなる時点においても無効とすることができます。
さらに、情報提供制度を利用することも有効であると考えます。何人も、特許庁に係属中の出願が登録することができないものである旨の情報及び当該理由を証明する資料を提供することが可能であり、提出された情報及び資料は審査の参考に用いられます。これにより、ユーザーにおいては、将来的に生じる不要な異議の申し立てや無効審判の請求がなくなり、かつ、瑕疵のある商標登録の防止にも寄与するものと考えます。
<特許庁資料より引用>
悪意の商標出願に関する報告書
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/tm5/document/bad_faith_report/chapter1_ja.pdf