改正意匠法に基づく新たな保護対象の出願動向

2024年12月、特許庁により、改正意匠法に基づく新たな保護対象の出願動向が公表されました。それによれば、新たな保護対象のうち、画像の意匠に関する出願・登録件数が最も多く、次いで建築物、内装の意匠の順に出願・登録がなされています。

<特許庁資料より引用>

出典:「改正意匠法に基づく新たな保護対象等についての意匠登録出願動向」https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/seidogaiyo/document/isyou_kaisei_2019/shutsugan-jokyo.pdf

2020年4月1日に特許法等の一部を改正する法律(令和元年5月17日法律第3号)が施行され、意匠の保護範囲が拡大されましたが、このうち建築物や内装といった空間デザインにまで保護対象を広げた背景には、近年、店舗等の外観や内装に対しても独創的なデザインを施して付加価値を高め、他の店舗等との差別化を図る傾向があることによると考えます。

なお、意匠法上の建築物に該当するためには、「土地の定着物であること」、「人工建造物であること(土木建造物を含む)」の要件を具備する必要があり、また、同法上の内装に該当するためには、「店舗や事務所、その他の施設の内部であること」、「複数の意匠法上の物品、建築物、又は画像により構成されるものであること」、「内装全体として統一的な美観を起こさせるものであること」の要件を満たす必要があります。さらに、登録されるためには、新規性と創作非容易性を有することが求められます。

<建築物の意匠の例>

意匠に係る物品:飲食店(意匠登録第1673492号)

<内装の意匠の例>

意匠に係る物品:回転寿司店の内装(意匠登録第1671153号)

今後も空間デザインに関する出願が増えるものと考えますが、店舗のみならず、住宅、マンション、オフィスビル等の建築や内装のデザインを行う事業者は、あらかじめ、意匠の登録情報を調査の上、他社の意匠権を侵害しないよう気を付けなければなりません。