2025年1月、特許庁により、改正意匠法に基づく関連意匠の出願状況が公表されました。それによれば、同年1月6日時点において、19,697件(内訳として、本意匠の公報発行前の出願が15,816件、本意匠の公報発行後の出願が3,881件)の関連意匠が出願されたとのです。
<特許庁資料より引用>
出典:改正意匠法に基づく新たな保護対象等についての意匠登録出願動向
https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/seidogaiyo/document/isyou_kaisei_2019/shutsugan-jokyo.pdf
そもそも意匠法では、同一又は類似の意匠について二以上の出願が競合した場合、異日出願については最先の出願人のみに、同日出願については出願人間の協議により一の出願人のみに登録を認める先願主義が採用されており、同一・類似の意匠については、権利の重複が認められないのが原則です。
しかし、この原則論を貫徹すると、デザインバリエーションの一つについては意匠登録が可能であっても、その他の類似する意匠については意匠権で保護されないことになってしまいます。そこで、前述の先願主義を修正する形で設けられたのが関連意匠制度です。
関連意匠は、デザイン開発において一つのコンセプトから多くのバリエーションの意匠が継続的に創作されるという実情に基づき、同一出願人による一群のデザインを同等の価値を有するものとして保護することを目的としたものであり、当該制度を利用することで、当初製品投入後に需要動向を見ながら追加的にデザインバリエーションを開発し、一群のデザインとして包括的に保護することが可能となります。
なお、従前の関連意匠制度(2006年の改正法に基づく制度)では、出願可能期間が本意匠の意匠公報発行日前まででしたが、2020年4月に施行された改正意匠法により、基礎意匠(最初に本意匠として選択した意匠)の出願から10年を経過する日前までとなり、出願の時期的要件が大幅に緩和されるとともに、関連意匠にのみ類似する関連意匠の登録も認められるようになりました。
※1998年に創設された関連意匠制度では、本意匠と同日の出願のみが認められていましたが、2006年の改正で、本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報の発行の日前に改められました。

<特許庁資料より引用>
出典:令和元年意匠法改正特設サイト
https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/seidogaiyo/isyou_kaisei_2019.html#kaisei
関連意匠制度を活用することで、後継デザインについても包括的に意匠権を取得することが可能となり、デザイン戦略における競争優位性の確保につながるだけでなく、第三者による模倣行為などにも幅広く対応することが可能になるものと考えます。