海外からの偽ブランド品の流入と規制強化

財務省が公表した2024年の一年間における知的財産侵害物品の輸入差止件数は33,019件で前年比4.3%増となり、輸入差止点数としては1,297,113点で前年比22.8%増だったとのことです。これは1日平均で90件、3,544点の知的財産侵害物品の輸入を差し止めていることになり、輸入差止価額は推計で約282億円にのぼるとのことです。

また、内訳としては、輸入差止件数及び点数ともに偽ブランド品などの商標権侵害物品が最も多く、その次に偽キャラクターグッズなどの著作権侵害物品が多いとのことです。

<財務省資料より引用>

令和6年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)

https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2024/20250307a.html

ところで、2022年以降、輸入差し止めの件数及び点数が増加している背景には、同年における法改正の影響があります。すなわち、販売目的に限らず、個人使用のために輸入した偽ブランド品なども税関の取締りの対象となったことが要因であるとされています。

商標法上、商標権者は指定商品等について、登録商標を使用する権利を専有しており、正当な権原や理由なく指定商品等について登録商標を使用する行為には商標権侵害(直接侵害)が成立します。また、類似範囲での使用行為にも商標権侵害(間接侵害)が成立し得ます。

使用には輸入行為も含まれますが、もっとも、商標の使用とは「業として」商品等に使用することを意味するため、法改正前においては事業者でない者が、個人的に使用する目的で輸入する行為は商標の使用に該当せず、商標権侵害が成立しないとして、関税法に基づく没収等の対象にはならないとされてきました。

国内に事業者(輸入・販売業者)が介在する場合には、当該事業者による模倣品の輸入に商標権の侵害が成立し、税関で模倣品を没収等することが可能なものの、近年、インターネットでの商取引により、国内の事業者を通さず、海外の事業者が国内の個人に直接販売し送付するケースが急増しているなか、法改正前においては、海外の事業者の行為に商標権侵害が成立するか否かが明確ではなかったことから、模倣品の国内への流入を食い止めることができないという問題がありました。

そこで、法改正により、外国にある者が郵送等により商品等を国内に持ち込む行為も、商標法における輸入行為に含むものとして、当該行為が事業者により権原なく行われた場合には規制の対象となることが明文化されました。

商標法第2条第7項

この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする。

なお、「他人をして持ち込ませる行為」とは、配送業者等の第三者の行為を利用して外国から日本国内に持ち込む行為を言います。因みに、自ら携帯品として日本国内に持ち込む行為(ハンドキャリー)は、従前から輸入行為に該当するとされており、事業性のある場合には商標権侵害が成立し得ます。