生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度

2024年12月6日、特許庁において第16回意匠制度小委員会が実施され、そこで配布された資料が公開されました。主な検討課題の一つとして、「生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度上の適切な対応」が挙げられ、以下の論点が示されました。

①意匠該当性

生成AIを利用して作成したデザインは意匠法に規定する「意匠」に該当するか

②創作者

生成AIを利用して作成したデザインの「創作者」は誰とすべきか

③引例適格性

生成AIを利用して作成したデザインは新規性・創作非容易性の判断の根拠資料となるか

④新規性喪失の例外

第三者が既存のデザインに基づき生成AIを利用するなどにより作成したデザインは新規性・創作非容易性の判断の根拠資料から例外的に除外すべきか

⑤創作非容易性

生成AI技術の進展により創作非容易性の判断は影響を受けるか

このうち①については、「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ」(令和6年5月)において、「自然人がAIを道具として用いて意匠の創作に実質的に関与をしたと認められる場合には、AIを使って生成した物であっても保護され得る。」との帰結が示されています。

また、②については、ダバス事件(東京地判令和6年5月16日(令和5年(行ウ)第5001号))において、「特許法に規定する「発明者」は、自然人に限られるものと解するのが相当である。」との判断が指標になるものと考えます。 なお、AI技術の発展と普及により、デザインを短時間に低コストで大量に生成し、公開することが可能となりますが、このことは、(既存デザインの創作者以外の)第三者においても同様であることから、既存デザインの創作者による新たなデザインの意匠登録出願における障害となり得るのではないかとの懸念が示されています。

<特許庁資料より引用>

出典:「意匠制度に関する検討課題について」

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/isho_shoi/document/16-shiryou/03.pdf

今後、意匠制度見直しの必要性や制度的措置の方向性について、より具体的な議論が進められていく予定とのことです。