B to B 事業における商標権取得の意味

株式会社サイエンスインパクトが運営する知財ポータルサイト『IP Force』によれば、2024年の商標取得件数ランキング(2024年に発行された商標公報に基づくランキング)では、以下の企業がTop10にランクインしています。

1位 花王(株) 442件、2位 (株)コーセー 431件、3位 (株)資生堂 372件、4位 小林製薬(株) 253件、5位 パナソニックホールディングス(株) 218件、6位 サントリーホールディングス(株) 173件、7位  日本メナード化粧品(株) 143件、8位 コスメカンパニー(株) 140件、9位 (株)ノエビア 138件、10位 (株)ジュン 137件

日用品、化粧品、医薬品などを扱う業界・企業が上位を占めるとともに、業態としても、B to C 事業を主とする企業が圧倒的多数であることがわかります。

<知財ポータルサイト『IP Force』より引用>

商標取得件数ランキング 2024年

https://ipforce.jp/shohyo?y=2024

特許庁が過去に発表した『2022 企業価値向上に資する知的財産活用事例集―無形資産を活用した経営戦略の実践に向けてー』においても、B to B事業では技術や品質が顧客に訴求することが多いことから、特許と技術的なノウハウが重要となる一方で、B to C事業やB to B to C事業においては、エンドユーザーを意識したブランディングが重要であるため、商標や意匠などが重視される傾向にあるとされています。また、B to Bビジネスにおいては、ブランドは、ストーリーよりも価格や品質によって形成される場合が多いとも指摘されています。その一方で、B to B事業を展開する企業でも、自社の製品を組み込んだ顧客製品に対して、自社のブランドも表示することを求め、自社ブランドの認知向上に努めている事例が(僅かながら)紹介されています。

<特許庁資料より引用>

『企業価値向上に資する知的財産活用事例集―無形資産を活用した経営戦略の実践に向けてー』

https://www.jpo.go.jp/support/example/document/chizai_senryaku_2022/all.pdf

B to Bビジネスでは、製品の機能・性能が何よりも重視されるとともに、B to Cビジネスのように不特定多数の需要者を対象とせず、取引先も比較的限定されていることが、商標取得の必要性を鈍化させる要因なのかもしれません。しかしながら、機能や性能の違いが僅かであるような場合、他社との差別化や競争力の強化として、商標を通じたブランド戦略というものが必要になってくるのではないでしょうか。もちろん、侵害対策という点では、商標権取得の意味は、B to B事業もB to C事業も変わりはありません。