商標的観点からの社名変更

大手食品会社のマルハニチロが、2026年3月1日付で、社名を「Umios(ウミオス)」に変更すると発表しました。グループのルーツである海「umi」を起点に一体「『o』ne」となり、食を通じて地球規模の社会課題を解決「『s』olutions」する決意が込められているとのことです。

一般的に、社名を変更する理由には、経営統合や合併によるもの、ホールディングス化やグループ化によるもの、事業拡大や分社化によるもの(業種名や事業名を削除または追加するなど)、ブランド化やイメージアップによるもの、事業改革や刷新に伴うものなどが考えられます。

ところで、社名を変更する場合、新しい社名や社章が日本国内(海外で事業を展開する場合は当該国)において、商標登録が可能かどうかは最も重要な事項であり、当然、事前に商標調査を行っておく必要があります。その一方で、すでに商標登録されている旧社名や旧社章をどのように扱うかは、その企業によって判断が分かれるところです。

商標法上の保護は、本来、商標を使用することによって蓄積された信用に対して与えられるものであり、使用していないか、あるいは使用しなくなった登録商標については、保護すべき信用が発生しないか、あるいは発生した信用が消滅するとして、保護の対象がなくなるというのが法の考え方です。なかには不使用取消審判を請求され、取り消される場合もあり得ますが、仮に取消審判を請求されない場合であっても、もはや維持管理する必要性が無いとして、次の更新のタイミングで放棄するケースもあります。逆に、経営陣の意向や創業者への配慮などから、当面のあいだ維持しておくといったケースもあり、一概に、法の趣旨や建前だけでは判断できない側面もあります。

なお、社名や社章の商標か否かに関わらず、社名(原簿上の権利者の名称)が変更になった場合には、すでに登録されている商標権に関して、特許庁に対し、旧社名から新社名による名義へ表示変更の申請を行う必要があります。複数件ある場合には、一括手続きによる併合申請も可能です。商標以外の産業財産権についても同様です。