近年、意匠法の改正や審査基準の見直しにより、意匠制度の拡充が図られています。特許庁では、この春公表した意匠出願動向調査(令和6年度)の中で、デザイン活動が企業活動を活性化するのか否かについて検証を行っています。具体的には、「意匠を保有することで翌年の売上高が増加した」という仮説に基づく分析を行い、その結果として、調査対象となった全企業で、「前年の意匠がある場合には売上高が0.7%増加すると推定される」とし、また、製造業を対象にした分析でも同様の傾向がみられ、「前年の意匠件数を1%増加させると、売上高が0.4%増加すると推定された」としています。しかしながら、中小企業においては前年の意匠件数と売上高の関係が確認できなかったとし、中小企業が意匠権をうまく活用できていない可能性があると指摘しています。
<特許庁資料より引用>
『令和6年度 意匠出願動向調査―マクロ調査―』
ところで、意匠権の活用と期待される効果とはどのようなものでしょうか。例えば、以下のような点が挙げられています。
・登録意匠の積極的な周知による他社へのけん制
・意匠権に基づく警告、侵害物品の輸入差止め、模倣品・類似品の排除
・デザイン力のアピールによる信頼性やブランド力の向上
・他者への実施許諾によるライセンス料の獲得
・投資家や金融機関等へのアピールによるビジネス機会の拡大
・創作者への社内報奨による創作意欲の向上、など
<特許庁資料より引用>
『事例から学ぶ 意匠制度活用ガイド』
https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/info/document/2907_jirei_katsuyou/jirei_katsuyou.pdf
せっかく取得した意匠権を有効に活用するためにも、他社の事例(成功例や失敗例)を参考にしたデザイン戦略を行うことも必要だと考えます。