パキスタンにあるカフェのサッタル・バクシ(Sattar Buksh)が、スターバックス(Starbucks)との間で繰り広げていた商標権紛争において、勝利を収めたというニュースがありました。スターバックス側は、サッタル・バクシのカフェ名とロゴが消費者に混同を引き起こし、自社ブランドの価値を毀損すると主張した一方で、サッタル・バクシ側は、あくまでパロディであり、パキスタンカルチャーの表現であると反論。法廷において、サッタル・バクシ側の主張が認められ、営業を継続することになったとのことです。なお、「サッタル」はパキスタンの一般的な男性名で、「バクシ」は「与える人、仕える人」などを意味するそうです。
<Times Nowより引用> サッタル・バクシのロゴ(左)と世界的に知られるスターバックスのロゴ商標(右)
Pakistan based Sattar Buksh Cafe Defies Starbucks in Legal Battle Over Name and Logo

ところで、パロディとは、他人の作品等を模倣し、その特徴を強調して、風刺やユーモラスな効果を狙って表現したものを指します。著名な商標を模した事例は我が国でも見受けられ、パロディ商標の有効性が争われたケースも少なくありません。
登録の可否については、商標法上、パロディであるか否によって画一的に判断されるのではなく、他人の未登録周知商標と類似する商標であるか否か(4条1項10号)、先行する他人の出願・登録商標と類似する商標であるか否か(同11号)、著名商標と混同を生じるおそれがあるか否か(同15号)、不正の目的があるか否か(同19号号)、公序良俗に反するか否か(同7号)に基づき、個別具体的に判断されます。
なお、以下の事例は、使用により広く認識されるに至った引用商標中の「BOSS COFFEE」の「BOSS」の文字を、単に「BOZU」の文字に置き換えたに過ぎないもので、かつ、パイプをくわえた男性の図形も、頭髪部分を除けば顔の向きや表情等が引用商標とほとんど同一であり、商品の出所について混同を生じるおそれがあると判断されたケースで(全部異議 平成10-090851)、4条1項15号に該当するとして取り消されています。
<J-Plat Patより引用> 引用商標(左)と異議申立により取り消された商標(右)

なお、15号に該当するか否かは、あくまで本件商標が同号所定の要件を満たすか否かによって判断されるべきものであり、原告商品が被告商品のパロディに該当するか否かによって判断されるべきものではないと判示した事例もあります(平成27(行ケ)10219「フランク三浦事件」)。商標法上は、パロディであるか否かが問題となるのではなく、あくまで同法の枠組みの中で判断されることになります。