キャラクターは、見た目のかわいらしさや親しみやすさなどから、商品やサービスの知名度や認知度に寄与するだけでなく、他社との差別化においても重要な役割を果たします。その一方で、人気のあるキャラクターは、常に模倣や不正使用の対象となるリスクを抱えています。
ここで、キャラクターを保護する法的手段としては、商標法、著作権法に加えて、意匠法による保護が挙げられます。キャラクターのネーミングや図柄自体は意匠法の保護対象とはなりませんが、具体的な物品等の形状・模様・色彩であって、工業的に量産可能であり、新規性や創作非容易性などの要件を具備する場合、意匠法の保護が及びます。
先般、大阪・関西万博の公式キャラクターである「ミャクミャク」の偽Tシャツを販売目的で所持したとして、商標法違反の容疑で大学生が逮捕されたというニュースがありましたが、この「ミャクミャク」は、その形状等が意匠としても登録されており、当該意匠に係る物品としては「ぬいぐるみおもちゃ」(意匠登録第1725617号)や「アイコン用画像」(意匠登録第1687581号、第1735315号)などがあります。
このほか、キャラクターの意匠に関する物品等の一般的な例としては、キャラクターを立体的に表した「人形」や「縫いぐるみ」、キャラクターの着ぐるみである「仮装用縫いぐるみ衣装」、キャラクターをモチーフにした文具や雑貨などが考えられます。
しかし、そのキャラクターがすでに公知となっている場合(新規性喪失の例外の適用も受けることができない場合)や、公知のキャラクターを単に表示しただけの場合(転用したにすぎない場合など)には、出願しても意匠登録を受けることができません。市場投入を優先し、人気が先行した結果、知財対策が後手に回るケースもあるため注意が必要です。
意匠登録のメリットは、言うまでもなく対象となる物品等のデザインを独占できる点にあり、その保護範囲が、同一のデザインのみならず、類似するデザインにまで及ぶ点にあります。人気キャラクターを模倣した製品が市場に出回ることがあっても、意匠登録がされていれば、その侵害行為に対して法的措置(差止請求や損害賠償請求)を講じることも可能となります。
キャラクターのブランド価値を守るとともに、ビジネスにおける信頼性の維持・向上を図る上でも、意匠登録は有効かつ強力な手段となります。