内装の意匠

改正意匠法により保護対象に加わった内装の意匠は、特許庁の発表によると、2025年10月1日時点で、出願件数が1,336件、登録件数が974件となっています。

<特許庁資料より引用>改正意匠法に基づく新たな保護対象等についての意匠登録出願動向 ※2025年10月6日発表

意匠法では、8条の2で「店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(以下「内装」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、内装全体として統一的な美感を起こさせるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。」と規定しています。すなわち、内装の意匠とは、複数の物品等(例えば、家具や什器等)から構成されるものであって、一意匠一出願(法7条)の例外として位置付けられています。

ところで、内装の意匠は、建築物の意匠のように、必ずしも土地の定着物であることを要せず、自動車、船舶、鉄道車両などの内装も対象となり得ます。例えば、JR東日本が2027年春に導入することを発表した「新たな夜行特急列車」の客室デザインも、鉄道車両の内装の意匠として計5件登録され話題となりました。なお、同社は旅客車そのものを物品とする意匠権も複数取得しており、鉄道車両について、内装と外装の双方に係る権利を複数保有しています。

内装の意匠は、内部において人が一定時間を過ごすために用いるものという点では、いかなる内装の意匠であっても、物品としての基本的な用途と機能は共通するため、侵害の問題が生じた場合には、もっぱら意匠の形状等の類否が争点になると考えられます。仮に、内装の意匠が他社の権利を侵害しているとなった場合、設計変更や改装・改築、あるいは、最悪の場合、取り壊しが求められるおそれもあります。多額の経済的な損失を負うことの無いよう、先行登録意匠の事前調査は必要不可欠であると言えます。※先行登録意匠が秘密意匠の場合には、侵害行為について、侵害者の過失は推定されず(意匠法40条)、意匠権者が立証責任を負うことになります。