形状等が変化する意匠の保護

意匠登録の対象となる物品の中には形状が変化するものがあり、特に玩具類には各部を動かして全体を異なる形状等に変化させることができるものが多く存在しています。例えば、動物のぬいぐるみで4本足の状態と2本足で立っている状態とに変化させることができるものや、車両の形状からロボットの形状に変化させることが可能なおもちゃなどです。また、その機能に基づき変化した前後で形状等が変わるものとして、びっくり箱のおもちゃなどもあります。さらに、玩具以外でも、家具や家電の分野で、背もたれが前傾や後傾に稼働する電動リクライニングシートや、ごみをかき集めるブラシを備えたアームが伸縮し、格納されている状態と展開している状態とで変化するお掃除ロボットなどもあります。

このように形状が変化する物品については、ある形状で意匠登録を受けても、別の形状で他人に意匠登録されてしまうおそれがあります。例えば、車両の形状のおもちゃとして意匠登録を受けても、ロボットの形状のおもちゃとして他人に意匠登録されてしまうような場合です。しかし、形状の異なる状態ごとに意匠登録を受けようとすると、費用的にも手続的にも煩雑となってしまうことから、意匠法では変化する意匠についても一つの出願手続で完全な権利が取れるよう、いわゆる動的意匠の保護に関する規定を設けています(意匠法6条4項)。

6条4項 意匠に係る物品の形状、模様若しくは色彩、建築物の形状、模様若しくは色彩又は画像が、その物品、建築物又は画像の有する機能に基づいて変化する場合において、その変化の前後にわたるその物品の形状等、建築物の形状等又は画像について意匠登録を受けようとするときは、その旨及びその物品、建築物又は画像の当該機能の説明を願書に記載しなければならない。

具体的には、願書の【意匠の説明】の欄に、変化の前後にわたる形状等の意匠登録を受けようとする旨と当該機能の説明を行う必要があります。併せて、願書の【意匠に係る物品の説明】の欄に、本願意匠が動的意匠である旨を記載することも、実務上、行われています。さらに、願書と合わせて提出する図面においては、変化の前後又は必要に応じて変化途中の形状等を表すことになっており、特許庁の意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引きでは、以下のように規定されています。※ただし、どの状態を変化前の形状等とするかの制約はありません。

・変化前の6面図等に加え、変化後の形状等全体の特定に必要な図を記載する。変化後の形状等全体の特定において、変化前の図によって特定できる形状等の部分等のみを表す図については、不可欠な図ではない。

・変化途中の形状等については、変化の仕方が理解できればよいので、その範囲で、必要に応じた図を追加する。

<特許庁HPより> 意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き 10.形状等が変化するものの場合

なお、令和元年の法改正により、意匠の定義に建築物や画像の意匠が加えられたことから、動的意匠に関しても、建築物または画像の有する機能に基づいて変化する場合も保護の対象とされました。