諸外国で商標権を取得する方法には、パリ条約や二国間条約などに基づき日本人が出願できる国の特許庁に対し、その国の言語で、その国の代理人を通じて直接出願する方法と、マドリッド協定議定書(PROTOCOL RELATING TO THE MADRID AGREEMENT CONCERNING THE INTERNATIONAL REGISTRATION OF MARKS)に基づき、英語で作成した1通の出願書類を日本国特許庁に提出することにより、加盟する複数国に一括して登録出願した効果を得ることができる方法の2パターンがあります。後者は略してマドプロ出願や単にマドプロとも呼ばれますが、このマドプロ出願に関しては、議定書の内容に応じた独特なルールと、そのルールを各締約国に適用させるための特例規定が存在し、直接出願の場合とは異なる運用に基づいた手続と管理が求められます。
そのうちの一つとして、セントラルアタックとセントラルアタック後の再出願というものがあります。マドプロ出願では、本国における出願(基礎出願)や登録(基礎登録)にもとづき、本国官庁を通じて出願手続を行い、その後、国際事務局における国際登録簿に記録され(国際登録)、さらに、指定した各締約国に通報されたのち各指定国の審査に係属し、商標登録の可否が判断されることになります。しかし、議定書の規定上、国際登録はその国際登録日から5年間は国際登録の基礎となった出願・登録に従属する旨が規定されており(議定書6条(3)(4))、基礎となった出願又は登録が国際登録日から5年の期間が満了する前に、拒絶、放棄、無効等となった場合または当該5年の期間満了前に拒絶査定不服や登録無効(取消し)等の審判が請求され、5年の経過後に、拒絶、放棄、無効等が確定となった場合には、基礎出願・登録の効果が終了した範囲内で国際登録された指定商品(役務) の全部又は一部について国際登録が取り消されることになります。その結果として、指定国における国際登録の効果も当該取消しに係る範囲内で失効することとなります。これを国際登録の基礎出願・登録への従属性、すなわち、セントラルアタックと呼んでいます。
一方、議定書にはセントラルアタックにより取り消された国際登録に関する救済手段として、セントラルアタック後の再出願の規定も設けられています(議定書9条の5)。例えば、日本国を指定する国際登録の対象であった商標が、上述のセントラルアタックにより国際登録において指定されていた商品又は役務の全部又は一部について国際登録が取り消された場合、その国際登録の名義人であった者は、国際登録が取り消された日から3月以内に、当該商品又は役務の全部又は一部について商標登録出願をすることができます(商標法68条の32第1項)。
なお、再出願における要件として、①再出願の出願人がセントラルアタックにより取り消された国際登録の名義人であった者と同一人であること、②再出願がセントラルアタックにより国際登録が取り消された日から3月以内にされたものであること、③再出願の願書に記載された商標とセントラルアタックにより取り消された国際登録に係る商標が同一であること、④再出願に係る指定商品又は指定役務がセントラルアタックにより取り消された国際登録に係る商品又は役務の範囲に含まれていることが求められます。
再出願が上記要件を満たすときは、その再出願は国際登録の日(事後指定のときは事後指定の日)にされたものとみなされます(商標法68条の32第2項)。また、再出願に係る国際商標登録出願についてパリ条約4条の規定による優先権が認められていたときは、同項の規定による商標登録出願に当該優先権が認められます(商標法68条の32第3項)。
また、セントラルアタック後の再出願には、拒絶理由に関する特例も設けられており(商標法68条の34)、セントラルアタックにより取り消された国際登録について、我が国で国際登録に基づく商標権として実体審査を経て保護が確定していたときは、再度実体的な拒絶理由(商標法5条5項及び6条以外の拒絶理由)の審査を行わないこととなっています(商標法68条 の34第2項)。その一方で、商標権として実体審査を経て保護が確定していないとき(国際商標登録出願であったものに関する再出願の場合)は、通常の審査(商標法3条、4条等)を行うこととされていますので注意が必要です(商第68条 の34第1項)。
<特許庁HPより> 「商標審査便覧」18.01 セントラルアタック後の再出願に係る取扱い