部分意匠制度に関する運用の変遷

我が国の意匠法における部分意匠の制度は、1998年の法改正により導入されたものであり、それ以前においては、意匠法の解釈上、「物品」とは市場において流通する有体物であるとされていたことから、それ自体独立して取引の対象となることができない物品の部分は法上の「物品」には当たらず、保護されるのは物品全体に係る意匠(全体意匠)のみとされていました。しかし、1998年の法改正により、2条1項の「意匠」の定義において「物品」の中に「物品の部分」が含まれることとなり、「物品の部分」も意匠法の保護対象となることが明文化されました。

<特許庁HPより> 平成10年改正意匠法 意匠審査の運用基準

この改正の趣旨は、独創的で特徴のある部分を取り入れつつ、意匠全体で侵害を避ける巧妙な模倣が増加し、十分にその投資を保護することができないものとなっていたことから、物品の部分に係る意匠も保護対象となるようにしたものです。この改正により、部分意匠として保護を受けようとする場合には、願書の記載事項中、【意匠に係る物品】の欄の上に【部分意匠】の欄を設けるこことされていましたが、この運用もまた、2019年の意匠法施行規則の改正により変更されました。具体的には、2019年5月1日以降に我が国へ出願される意匠登録出願については、願書の【部分意匠】の欄の記載が不要となりました。※仮に、【部分意匠】の欄を記載して出願した場合、特許庁において一律、当該【部分意匠】の欄が削除されます。

なお、物品等の部分について意匠登録を受けようとする場合の願書及び図面の記載については、以下のサイトに詳細が掲載されています。

<特許庁HPより> 「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」第2部 物品等の部分について意匠登録を受け ようとする意匠の表し方

ところで、2019年の「意匠審査基準」の一部改訂に伴い、従来、先後願(第9条第1項及び第2項)の規定の対象外であった全体意匠と部分意匠も同条の規定が適用されることになり、全体意匠同士や部分意匠同士に加えて、全体意匠と部分意匠についても先後願が判断されることになりました。したがって、例えば、先に部分意匠の意匠登録出願がされ、後日に全体意匠の意匠登録出願が同一又は類似の物品についてされた場合、先願が登録され、後願の全体意匠が先願の部分意匠に類似しているときには、後願の全体意匠に対し意匠法第9条第1項の規定が適用され、同日に同一又は類似の物品について、全体意匠の意匠登録出願と部分意匠の意匠登録出願がされた場合、それらが互いに類似しているときには、意匠法第9条第2項の規定が適用されることになります。

<特許庁HPより> 意匠審査基準の一部改訂について ※「今回の改訂箇所の参照資料」第6部 先願を参照

また、関連意匠についても運用の改正があり、2019年5月1日以降の意匠登録出願からは、物品等の全体について意匠登録を受けようとする意匠と、物品等の一部について意匠登録を受けようとする意匠との間で、本意匠・関連意匠として登録することが可能となっています。

<特許庁HPより> 物品等の全体と部分の間の関連意匠登録事例について  令和4年12月13日第21回意匠審査基準ワーキンググループ 資料1 近年の意匠登録出願及び審査運用の概況報告 ※4.意匠制度・運用改定に基づく 意匠登録事例集の公表、1.物品等の全体と部分の間の関連意匠登録事例を参照