「月光仮面」の白黒映画を、AI搭載の画像編集ソフトを用い、無断でカラー化してDVDに複製し、かつ、フリーマーケットサイトで販売した人物が、著作権法違反容疑で追送検されたというニュースがありました。
著作権者の許諾を得ずに、著作物の複製、転載、転用、改変等を行った場合、原則、著作権侵害に該当します。上記事例については、複製権および譲渡権侵害の問題があることに加えて、翻案権侵害の該当性も問題となります。
翻案とは、「既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為」とされています(最高裁平成13年6月28日判決 江差追分事件)。
モノクロ→カラー化、カラー→モノクロ化、あるいは、セピア色などに改変することは、翻案権侵害に該当する可能性があるため注意が必要です。
ところで、映画の著作物の著作者については、著作権法に以下のような規定があります。
16条 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の適用がある場合は、この限りではない。
15条1項 法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
また、映画の著作物の保護期間については、同法に以下のとおり規定されています。
54条1項 映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後70年(その著作物がその創作後70年以内に公表されなかったときは、その創作後70年)を経過するまでの間、存続する。
上述の映画「月光仮面」については、東映が著作権を有しており、かつ、同シリーズ作品は1958年以降に公開されているとのことで、著作権法上、保護期間中となっています。
なお、著作権侵害とは別に、著作者には人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)があり、著作者の意に反して著作物の改変を行うことは、著作者人格権の侵害にもなり得ます。