生成AIを使った画像の利用と著作権侵害のリスク

株式会社バンダイのプレスリリースによると、生成AIを用いて作成されたフィギュアなどの画像で、同社及び株式会社BANDAI SPIRITSのコーポレートシンボルやブランドロゴが入った画像がSNS上で確認されるとして、こうした画像が両社とは関連のないものであるとして注意喚起するとともに、正しい商品情報は公式サイトで確認するよう呼びかけています。また、生成AIを用いて作成された画像についても、著作権侵害等の違法性が疑われる場合があるとして、重ねて注意喚起を行っています。

<株式会社バンダイ公式サイトより> プレスリリース(2025年9月16日)

昨今、AIシステム・サービスを利用して生成された画像などの生成物と著作権侵害の問題がしばしば取り上げられており、文化庁では、「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」の資料を公表し、AI利用者に対してリスク低減の方策について案内を行っています。

同庁によれば、生成AIを利用する場合、生成AIの仕組み上、学習データに含まれる既存の著作物と類似した生成物が生成されることがある点や、生成AIを利用しない場合と異なり、AI利用者が既存の著作物を認識していなくても、生成・利用が著作権侵害となることがある点を指摘し、まずは、生成AIの仕組みや特性を理解した上で利用することが必要だとしています。

・著作権法30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)の適用の有無

また、同庁によれば、生成AIに対して生成の指示をする際に、既存の著作物を指示として入力する場合が想定されるところ、このような場合、入力に伴って生じる著作物の複製は、入力された著作物を情報解析して生成AIに対する生成の指示(プロンプト)とするためのものであり、原則として、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(著作権法30条の4)の規定が適用されると考えられる一方、入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させるといった目的で入力を行う場合には、「享受」目的が併存しているとして、同条の規定が適用されない場合があると指摘しています(このような場合は、AIへの入力に伴う著作物の複製等について、権利者の許諾が必要となります)。

※各種のAIシステム・サービスにおいては、利用規約等で当該システム・サービスの利用上のルールにおいて、著作権侵害のおそれがある利用方法を禁止又は制限している場合があります。例として、他人の著作物を入力することの禁止などが挙げられます。

・著作権法30条1項(私的使用のための複製)や同法30条の3の該当性の有無

生成AIによる生成については、あくまで個人が私的使用の目的で生成する場合(著作権法30条1項)や、企業・団体等の内部において、権利者から許諾を得て利用することを前提に検討の過程で生成する場合(同法30条の3)、これらの規定の範囲内であれば、権利者の許諾なく適法に利用することができます。他方、同庁では、AI生成物をインターネット上で配信したり、複製物を譲渡等する場合においては、上記既定の範囲外となるケースが多いと指摘しています。

・著作権侵害の要件としての「依拠性」の該当性の有無

著作権侵害の要件としては、著作物性や類似性に加えて、依拠性が挙げられますが、同庁によれば、生成AIを利用した場合であっても、AI利用者が既存の著作物を認識しており、生成AIを利用して当該既存の著作物と類似したものを生成させた場合には、依拠性が認められ得るとしています。例えば、生成AIへの指示(プロンプト)として既存の著作物そのものを入力した場合や、既存の著作物の題号、タイトル、キャラクター名などの特定の固有名詞を入力した場合は、AI利用者が既存の著作物を認識していたことを推認させるとして、依拠性が認められやすくなるとしています。AI生成物の利用に際しては、既存の著作物と類似していないことを確認する以外に、依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等、生成物の生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望ましいとしています。

<文化庁資料より引用> 「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日 文化庁著作権課)