知的財産権とノーベル賞

日本時間の10月6日(月)の夜、ノーベル生理学・医学賞の発表があり、大阪大学特任教授で、免疫学を専門とする坂口志文氏の受賞が決まったとの報道がありました。受賞の理由は、「免疫応答を抑制する仕組み」に関するもので、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見したことによるものです。

自然科学分野におけるノーベル賞の受賞対象の多くが、原理や法則性の発見など、基礎研究の成果に基づくものといった印象がありますが、その一方で、研究の過程において出願を行い、特許としての活用を図ろうとする試みも見られます。特許庁のHPには、自然科学研究者によるノーベル賞受賞者のうち、特許出願が確認できたケース(2022年までのケース)が複数紹介されています。

<特許庁HPより>ノーベル賞と特許について

ところで、今般、ノーベル生理学・医学賞の受賞が決定した坂口志文氏についても、以下の特許出願の発明者として、その名前を確認することができます。

出願番号:特願平10-517383 発明の名称:自己免疫性関節炎を自然発症するマウス

特許庁HPによれば、「2000年の物理学賞はジャック・キルビー氏のICの基本特許に関する技術を対象に授与され、また2019年の化学賞を受賞した吉野彰氏も自身で特許発明が評価されたと述べるなど、実用化・商業化に向けた研究が直接ノーベル賞の受賞対象となることも増えています。」とし、「今後も産業技術に関わる特許発明が受賞対象になる可能性は高いと考えられます。」としています(ノーベル賞と特許について)。