会社名を商標出願する場合の留意点

新たに会社を設立することを予定している個人の方や、現在の社名(商号)を変更することを計画中の法人の方々にとって、会社名を商標登録すべきかどうか悩まれることがあると思います。

ここで、商標法上、保護の対象となる商標は、商品について使用する商標と、役務(サービス)について使用する商標です。すなわち、会社名を自社の商品やサービスの出所表示として使用するか否かが、商標登録出願のポイントになります。もし、社名とは別個の商品ブランド名やサービス名があり、社名はあくまで商号としての位置づけにとどまる場合には、あえて商標登録する必要性は乏しいかもしれません。ただし、別個の商品ブランド名やサービス名がある場合でも、社名が商品やサービスの取引書類や宣伝・広告媒体に表示され、社名自体も出所表示として使用する場合には、商標出願する意味があると考えます。さらに言えば、他社が先に類似する名称を商標登録してしまうこともあり得るため、防衛的な観点で出願しておくという考え方もあります。

ところで、新たに会社を設立することを予定している個人や、現在の社名(商号)を変更することを計画中の法人が、先だって、新たな会社名を商標出願した場合に想定される拒絶理由があります。

商標法4条1項7号では、公序良俗を害するおそれのある商標は登録を受けることができない旨を規定していますが、公序良俗を害するおそれのある商標には、他の法律によって当該商標の使用等が禁止されている場合も含まれます。例えば、「会社」等の文字を有する商標は、会社法によって使用の制限があることから、以下の場合、同号の拒絶理由が通知されます。

・出願人が自然人である場合:出願人名が個人名(例えば、特許一郎)で、出願商標が会社名(例えば、株式会社ABC)を含む場合です。

会社法第7条では、「会社でない者はその名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。」としていいます。すなわち、自然人が、「株式会社」、「合名会社」、「合資会社」、「合同 会社」、「(株)」等の文字を含む商標を出願した場合には、商標法4条1項7号に該当するものと判断されます。

・出願人が当該商標の表す法人以外の法人である場合:出願人名が法人名(例えば、株式会社abc)で、出願商標が他の法人名(例えば、株式会社xyz)を含む場合です。

会社法第6条第1項では、「会社はその名称を商号とする。」と規定されています。すなわち、自己の商号と異なる商号を自己の商標として採択・使用することは、商取引の秩序を混乱させるおそれがあることから、商標法4条1項7号に該当するものと判断されます。

<特許庁資料より> 『商標審査便覧』42.107.36 「会社」等の文字を有する商標の取扱い

したがって、新たに会社を設立することを予定している個人や、商号を変更することを計画中の法人は、「株式会社」等の法人格を含んだ社名を商標登録しようとする場合、出願のタイミングに留意する必要があります。

一方で、出願した商標の構成中に、現に存在する他の法人の名称等が含まれている場合には、商標法4条1項8号の拒絶理由が通知されてしまいます。同号では、他人の氏名や名称等を含む商標については、たとえ自己の氏名や自社の名称と同じものであっても、一定の要件を具備しなければ登録を認めない旨を規定しており、同号に該当するものとしては、「株式会社」等の法人格を含んだ名称や、これらの文字を除いた法人名の略称で著名なものが挙げられます。

このほか、他人の先願・先登録商標と類似する商標であると判断された場合や、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標と判断された場合には、商標法4条1項11号や15号に該当する旨の拒絶理由が通知される場合もあります。

新社名を商標登録しようとする場合、抵触関係にある商標がすでに存在していないかどうかも含めて、事前に入念な検討と調査を行うことが肝要です。