商標の絶対的拒絶理由と相対的拒絶理由

日本の特許庁における商標審査では、絶対的拒絶理由と相対的拒絶理由の双方が審査されます。絶対的拒絶理由の典型例として挙げられるのは、単に商品の産地・販売地・品質などを表したに過ぎない商標や、役務の提供場所・質などを表したに過ぎない商標など、いわゆる識別力を欠く商標の場合です。そのほか、公序良俗に反する場合や、商品・役務の品質及び質の誤認のおそれがある場合も挙げられます。一方、相対的拒絶理由とは、同一又は類似関係にある先行出願・登録商標が存在する場合に通知される拒絶理由です。

なお、諸外国では、絶対的拒絶理由のみを実体審査の対象としているケースもあります。その代表例が欧州連合です。欧州連合商標出願については、絶対的拒絶理由のみが審査され、相対的拒絶理由の審査は、異議申立てがある場合にのみ行われます。したがって、仮に同一又は類似の商標が登録されていても、先行商標権者等から異議申立てがなされなければ登録される可能性があります。※先行商標の所有者との間で事前に協議の上、同意を得ておくケースもあり得ます。

ところで、今般、アルゼンチン産業財産庁は、商標出願の審査事項を絶対的拒絶理由に限定することを規定した決議を承認したとのことです。これにより、先行商標との類似性に関する相対的拒絶理由については、商標出願の公告後に異議申し立てがあった場合にのみ審査されることとなりますが、商標の出願・登録手続の迅速化が図られる一方、商標権者が自身の登録商標に類似した商標がアルゼンチンで出願されていないかどうかを監視する負担が増えることにもなります。

<JETRO資料より> ビジネス短信 「先行商標との類似性の審査は異議申し立ての場合のみに、商標権者の監視負担増加に懸念」