大学の校章と商標

大学の校章(ロゴマーク)などを使用したデジタル商品がインターネット上で無断販売され、被害に遭った大学側が購入を控えるよう注意喚起しているというニュースがありました。就職活動や学会報告などで使用できるという謳い文句のもと、国内外の大学の校章や、キャンパス内の画像をモチーフとしたプレゼンテーション用ソフトのひな型などが販売され、中国の「ウィーチャット(微信)」や「アリペイ」などを通じて購入できる仕組みになっていたとのことです。なお、大学の中には、自校の校章や名称自体を商標登録しているケースもあり、当該商標と同一又は類似の商標を、同一又は類似の商品や役務に対して無断で使用すれば、原則、商標権侵害となります。

ところで、実在する大学の校章や名称と同一又は類似の商標を第三者が出願した場合、想定される拒絶理由としては、商標法4条1項8号(他人の名称等を含む商標)、同10号(未登録周知商標と同一又は類似の商標を同一又は類似の商品・役務を指定して出願した場合の規定)、同11号(先願先登録商標と同一又は類似の商標を同一又は類似の商品・役務を指定して出願した場合の規定)、同15号(出所混同防止の総括規定)が挙げられますが、これら以外に、同6号の拒絶理由に該当する可能性もあります。

同6号は、「国又は地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」を、本人以外が出願した場合には登録できない旨を規定しています。ここで、「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」には、大学も含まれるとされており、たとえ承諾を得たとしても登録不可とされています。なお、商標審査基準によれば、著名の程度については、公益保護の趣旨に鑑み、必ずしも全国的な需要者の間に認識されていることを要しないとされています。

他方で、実在する大学があるか否かにかかわらず、出願商標の構成中に「大学」の文字が含まれる場合、同7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当するとして、拒絶理由が通知される可能性があります。「大学」の文字は、学校教育法により大学以外の教育施設が用いることを禁止されている名称であり、学校教育法に基づいて大学の設置の認可を受けていることが確認できない出願人が、構成中に「大学」の文字を含む本願商標をその指定役務に使用するときには、当該役務があたかも学校教育法により設置の許可を受けている大学によって提供されるものであるかのように誤認させるおそれがあり、学校教育制度に対する社会的信頼を害し、公の秩序を害するおそれがあると判断される可能性があるので注意が必要です。

なお、拒絶理由は単一ではなく、該当する場合には複数の拒絶理由が同時に通知されることになります。