小売業等の役務商標としての保護

商標法上、保護の対象となる商標は、「商品」について使用する商標と、「役務」について使用する商標です。

「商品」とは、流通過程において独立して商取引の対象となり、かつ、代替性を有する有体動産です。例えば、ノベルティグッズは主たる商品の販売促進を目的として無償で配布される付随的な物品であり、独立して商取引の対象となるものではないとして、商標法上の「商品」とはみなされないのが通例です。また、骨とう品はそれ一品のみであって代替性が無いため、法上の「商品」とはみなされません。さらに、不動産や無体物(電気、ガスなど)は有体動産ではないため、同じく法上の「商品」には該当しません。ただし、プログラムは無体物でありながら、ダウンロード可能な場合は、法上の「商品」とみなされます。

一方、「役務」とは、他人のために行う労務又は便益であって、かつ独立して商取引の目的たりうべきサービスを意味します。例えば、自社の製品宣伝のために行う広告は、他人のために行う労務又は便益ではないため、法上の「役務」ではありません。また、商品の販売に際して行う包装のサービスや、そば屋やピザ店が行う出前(デリバリー)などもあくまで付随的なサービスであり、独立して商取引の対象となるものではないため、法上の「役務」とはみなされません。

ところで、上記の「役務」に、「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする」との条文(商標法2条2項)が追加されたのは、いまから約20年前の平成18年における法改正においてです。そして翌年の平成19年4月1日から、小売業者や卸売業者が使用するマークをサービスマークとして保護する小売等役務商標制度がスタートしました。

従来、小売業者等が使用する商標は、取り扱う「商品」について登録を行うことで保護されていました。このため、取り扱う「商品」が多種類の分野に及ぶ場合には、商標権の取得をする際に多岐にわたる「商品」の区分を指定して登録をしなければならず、費用が高額になるという問題点がありました。しかし、小売等役務商標制度の導入により、どのような「商品」を取り扱う小売業者等であっても、小売等役務という一つの分野で商標権の取得をすることができ、より低廉に権利を取得することが可能となりました。

小売等役務商標における使用例としては、取扱商品の値札、折込みチラシ、価格表、レシート、ショッピングカート、買い物かご、陳列棚、会計用レジ、店舗の看板、店舗内の売り場の案内板、店舗内の売場の名称、店員の制服・名札、レジ袋、包装紙、テレビ広告等において表示するケースが挙げられます。また、近年では、オンライン上での広告等における使用も主な使用例として挙げられます。

なお、小売等役務を指定して出願することにより、「役務」だけでなく「商品」を指定した後願に係る出願人に対しても、後願排除効が生じるため非常に有意義です。

※小売等役務を指定した場合、「役務」の類似群コード(例:35K03)と「商品」の類似群コード(例:30A01)が付与され、商標審査上、同じコードを有する他の小売等役務だけでなく、同じコードを有する「商品」との間でも、相互に類似と推定されます。