著名標章としての「万博」

大阪・関西万博の開催まで2週間を切るなか、目玉の一つとなっている「空飛ぶクルマ」について、デモ飛行を計画していた複数事業者のうち、日本航空と住友商事の共同事業体が会期中の運行を断念し、残りの陣営(ANAホールディングスと米国ジョビー・アビエーションのグループ、丸紅、スカイドライブの3陣営)が実施するとのニュースがありました。

ところで、当該万博には特許庁も出展し、「知財のチカラ」について事例や体験を通じて伝える予定とのことですが、同じ知財で商標法の観点から当該万博について付言しますと、準備から運営開催までを担う「公益社団法人2025年日本国際博覧会協会」が、同団体名義で「大阪・関西万博」の文字やキャラクターなどの商標を出願・登録しており、現段階で60件ほど確認することができます(出願係属中のものを含む)。なお、同団体以外が当該万博に関する文字や図形等の商標と同一又は類似の商標を出願した場合には登録を受けることはできません。

商標法では、不登録事由の一つとして「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」を挙げています(商標法4条1項6号)。その立法趣旨は、当該標章を一私人に独占させることが権威の尊重及び国際信義の上から好ましくないというものであり、公益的な観点に基づいています。たとえ承諾があっても登録は認められず、当該団体自身が出願した場合のみ登録が認められることになります(同条2項)。

因みに、「万博」の文字は「国際博覧会に関する条約に基づき、国が直接主催する又は国が公式に認める法人が主催する、国際事務局に認定又は登録された世界的な規模で開かれる博覧会」を意味する「万国博覧会」の略称であり、特許庁によって著名標章として位置付けられています。なお、特許庁による大阪・関西万博の出展情報は以下のサイトから確認できます。

<特許庁による2025年大阪・関西万博特別サイト>

https://www.jpo.go.jp/news/expo2025/index.html