いまからちょうど10年前、経済産業省が報告した「主力事業の製品ライフサイクル」に関する調査結果(2015年時点において、製品ライフサイクルが10年前と比べてどう変化したかという質問に対する回答結果)では、ほとんどの業種において、製品ライフサイクルが「長くなっている」と回答した企業よりも、「短くなっている」と回答した企業の方が多く、当時すでに製品ライフサイクルの短縮化が生じていたことがうかがえます。その主な理由として、第一に「顧客や市場のニーズの変化が速い」ことが挙げられ、次いで、「技術革新のスピードが速く、製品の技術が陳腐化しやすい」、「業界が過当競争に陥っている」ことなどが挙げられています。
<経済産業省資料より引用>
『2016年版ものづくり白書』第1部第1章第3節「市場の変化に応じて経営革新を進め始めた製造企業」
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2016/honbun_pdf/index.html
ところで、製品のライフサイクルは、導入期→成長期→成熟期→飽和期→衰退期の5つのフェーズに分解して捉えることができるとされています。しかし、これはあくまで理論上の話であり、製品によっては、こうしたライフサイクルに影響されず、ロングセラーになっているものもあります。いずれにしても、製品を市場に投入する段階で、ライフサイクルの長短や持続可能性を予測することは困難です。それゆえ、出願した商標の登録手続に際して、10年一括納付ではなく5年の分割納付を選択するケースや、出願して登録査定になっても登録料を納付せず放棄するケースもあります。
他方で、商標の登録後、事業計画の変更等により商標を使用しない状況が長期間続いてしまうこともあります。ただ、そのようなケースでも、将来的に使用する可能性がある場合、存続期間の更新登録申請を行い、そのまま維持しておく場合と、あらためて同一商標を出願し直す場合とがあります(後者の場合、指定商品・役務の内容や範囲を見直すことも同時に行われます)。これは、一定期間(継続して3年以上)、日本国内において商標権者または使用権者が登録商標を指定商品等に対して使用していない場合、第三者から不使用取消審判を請求されるおそれがあるためで、安全に自社商標を維持しておきたい場合の手段です。リバイバル版(復刻版)として製品を販売することが見込まれる場合にも有効な手段となり得ます。
商号やハウスマークを商標出願する場合とは異なり、商品名やサービス名を商標として出願する場合、その維持管理や活用には様々な判断が求められ、時宜に応じた対応や見直しが必要となります。