GIと商標の併用による地域ブランドの保護

農林水産省が管轄する地理的表示(GI: Geographical Indication)の保護制度は、地域ならではの農林水産物や飲食料品(酒類を除く)のブランドを保護する制度であり、当該制度が開始されてから、今年でちょうど10年の節目を迎えます。

ところで、商標(地域団体商標を含む)の登録に加えて、GIを重ねて登録することにはいくつかのメリットがあります。例えば、GI制度のもとでは、地理的表示と同一又は類似する表示の不正使用に対して国が直接的に取り締まりを行い、排除命令に従わなければ罰則を科す点、登録品の多くが国家間の相互協定によって海外でも保護される点、更新手続が不要な点(取消されない限り存続する)などです。※地理的表示と地域団体商標の比較については当サイトのブログ(2024年12月23日)をご参照下さい。

なお、GI制度には、農林水産物や飲食料品に関する地理的表示保護制度のほかに、国税庁が管轄する酒類に関する地理的表示制度も存在します。WTO(世界貿易機構)の発足に際してぶどう酒と蒸留酒の地理的表示の保護が加盟国の義務とされたことから、1994年に国税庁が当該制度を制定し、その後、2015年に見直しが行われ、現在ではすべての酒類が制度の対象となっています。

例えば、酒類の地理的表示の登録例として、兵庫県神戸市灘区、東灘区、芦屋市、西宮市を産地とする「灘五郷」の名称がありますが(種類区分:「清酒」)、この「灘五郷」に関しては、以下の商標が登録されていることに加えて(第6237757号 指定商品:「神戸市灘区・神戸市東灘区・芦屋市又は西宮市で生産された清酒」)、同商標権者の名義で、「灘の酒」の文字(標準文字)からなる地域団体商標も登録されており(第5030720号 指定商品:「灘で生産された清酒」)、GIと商標を併用した戦略的な地域ブランドの保護がなされている実例と言えます。

<Jplat-Patの登録情報より引用> 商標登録番号:第6237757号 商標権者:灘五郷酒造組合