ロイヤリティフリーと著作権フリー

イラストや写真などのデジタル素材の利用に際して、しばしば目にするのが「ロイヤリティフリー」や「著作権フリー」というワードです。ロイヤリティ(Royalty)には「使用料」という意味がありますが、一般的に「ロイヤリティフリー」の場合は、いったん支払うと追加料金なしで使用できる(=素材や作品を使用するたびに料金が発生しない)という特徴があります。ただし、著作権自体は存在していることから、利用規約に従って使用する必要があります。デジタル素材を取り扱うサイトでは、ユーザーが利用規約の内容に同意し、料金を支払ったうえでダウンロードする流れになっているのが通例ですが、なかには禁止事項が別途設けられており、商用利用を禁止しているケースもあるため事前のチェックが必要です。

他方、「著作権フリー」の場合は、著作権がすでに消滅しているか放棄されており、利用制限がなく無料で利用できる場合が多いと言えますが、例外もあるので注意しなければなりません。また、紛らわしいのが「フリー素材」というワードです。必ずしも、無料で自由に使用できるというわけではなく、「ロイヤリティフリー」と「著作権フリー」を混同して用いられている可能性もあり、利用条件の有無を確認することが不可欠といえます。

ところで、茨城県内にある市立小学校の学年通信で、他者のイラストを無断使用するという侵害事件があり、市がイラストの作者に損害賠償金を支払ったというニュースがありました。作者側は利用規約でイラストの無断使用を禁じ、使用に際しては有料としていたにもかかわらず、学校側は作者の許可を得ず、料金も未払いだったとのことです(『茨城新聞クロスアイ』2025年11月26日)。

なお、著作権法では、著作物の利用を一律に禁止しているわけではなく、一定の条件を具備する場合、著作権者の許諾なく著作物の利用を許容する権利制限規定が設けられており、当サイトのブログ(2025年11月20日)でも、権利制限規定の代表例である「引用」(著作権法32条)について述べましたが、学校などの教育機関に関して言えば、教科用図書や教材などへの掲載にも権利制限規定が設けられています(同法33条~35条)。ただし、学校などの教育機関であれば何でも自由に公表された著作物の複製等が可能になるというわけではありません。条文上の諸要件を具備することはもちろんのこと、著作者への通知や文化庁長官が定める算出方法により算出した額の補償金の支払い義務も生じます。

※文化庁では、同庁のHPで著作物の扱い方や様々な疑問について一般向けにわかりやすく解説したテキストなどを複数紹介しています。学校などの教育現場における著作物利用について解説したテキストも掲載されています(文化庁HP 著作権に関する教材・講習会)。