意匠への変更出願と関連規定

意匠法には、特許出願や実用登録出願を意匠登録出願に変更できる旨の規定が設けられています。例えば、ある新しい形状の発明をし、それが技術的に効果のあるものと考えて特許出願をしたところ拒絶されたため、その形状の美的な面について意匠登録を受けようとする場合などに、以下の規定を利用することができます。

13条1項 特許出願人は、その特許出願を意匠登録出願に変更することができる。ただし、その特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月を経過した後は、この限りでない。

同2項 実用新案登録出願人は、その実用新案登録出願を意匠登録出願に変更することができる。

なお、特許出願の場合は変更出願ができる時期的要件がありますが、実用新案登録の場合は実体審査が行われることなく登録となるため、特許の場合のような時期的要件はなく、出願が特許庁に係属している間は変更出願が可能とされています。

ところで、特許出願や実用新案登録出願から意匠登録出願へ出願の変更がなされた場合、もとの特許出願や実用新案登録出願は取り下げられたものとみなされる一方で(同4項)、その新たな意匠登録出願はもとの出願の時にしたものとみなされます(同6項)。ただし、実務上は、もとの出願の最初の明細書及び図面に、その新たな意匠登録出願の意匠が明確に認識し得るように具体的に記載されている場合に限り、出願日の遡及効を認めるとされています。

<特許庁HPより> 「意匠審査便覧」18.02 変更出願における出願日の遡及の取扱い

一方、出願の変更における新たな意匠登録出願については、一定の要件のもとに、新規性の喪失の 例外規定の適用を受けることが可能です。具体的には以下の要件を満たしていることが必要です。

(1)もとの特許出願又は実用新案登録出願について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を出願と同時に提出し、かつ、証明書を30日以内 に提出しているとき。

(2)もとの特許出願又は実用新案登録出願について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面のみを提出している場合であって、出願の変更がもとの出願の日から30日以内に行われたとき。この場合は、新たな意匠登録出願についてもとの出願の日から30日以内に証明書 を提出しなければならない。

<特許庁HPより> 「意匠審査便覧」18.01.03 出願の変更における新たな意匠登録出願についての新規性の喪失の例外の規定の適用について

さらに、出願の変更における新たな意匠登録出願については、一定の要件のもとに、パリ条約による優先権等の主張の規定の適用を受けることも可能です。具体的には以下の要件を満たしている必要があります。

(1)もとの特許出願又は実用新案登録出願について優先権の主張の手続の規定による書面を出願と同時に提出し、かつ証明書を所定の期間内に提出しているとき。最初の出願の日(第一国への出願の日)から6月以内にもとの特許出願又は実用新案登録出願をしている場合に限り、同規定の適用を受けることができる。

(2)もとの特許出願又は実用新案登録出願について優先権の主張の手続による書面のみを提出している場合であって、出願の変更がもとの特許出願又は実用新案登録出願の日から3月以内に行われているとき。この場合は、新たな意匠登録出願についてもとの出願の日から所定の期間内に、証明書を提出しなければならない。ただし、最初の出願の日(第一国への出願の日)から6月以内にもとの特許出願又は 実用新案登録出願をしている場合に限る。

<特許庁HPより> 「意匠審査便覧」18.01.04 出願の変更における新たな意匠登録出願についてのパリ条約による優先権等の主張の規定の適用について

なお、複数の意匠を包含する一特許出願又は一実用新案登録出願は、これを二以上の意匠登録出願に変更することが可能です。出願の変更は、もとの出願と新たな出願とが内容的に同一性を有していることが必要ですが、保護対象の客体が異なることから、一の発明又は一の考案に関連して複数の意匠の対象となる客体が特許出願又は実用新案登録出願に存在している場合が想定されます。このような複数の意匠を包含するもとの出願の変更については、意匠法において対象となる客体のすべてが保護対象となり、その客体たる意匠が複数存在している場合、分割の手続を経過するまでもなく可能であると解するか、変更すると同時に分割が行われた(分割の手続を省略した)と解するかに相違があるとしても、結果的には二以上の意匠登録出願とすることができるとされています。

<特許庁HPより> 「意匠審査便覧」18.11 一特許出願又は一実用新案登録出願が二以上の意匠登録出願に変更された場合の取扱い