二次的著作物と原著作者の権利

昨年8月、二次的著作物の制作及び利用をめぐる著作権侵害事件に関する控訴審の判決が言い渡されました(令和7年(ネ)第10007号)。当事件は、原著作物であるシナリオに依拠して漫画を制作し、その漫画を書籍として頒布するとともに、電子書籍としても販売していた行為等をめぐって争われたものであり、原告シナリオを漫画化することなどについて許諾があったか否かが争点の一つとなっていましたが、被告側の主張が認められ(許諾があったと認められ)、原告側の請求が退けられる結果となりました。

ところで、著作権法上、二次的著作物とは「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」と定義されており(2条1項11号)、かつ、「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と定められています(同27条)。

例えば、作家の甲が執筆した小説aを、翻訳家の乙が翻訳物bとして他の言語に訳した場合、作家甲=原著作者、小説a=原著作物、翻訳家乙=二次的著作物の著作者、翻訳物b=二次的著作物という位置づけになります。なお、27条にある通り、著作者は著作物を翻訳等する権利を専有していることから、翻訳家乙は作家甲の許諾を得た上で、小説aを翻訳物bとして翻訳することが必要です。

さらに、著作権法では、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利について、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と規定しています(同28条)。すなわち、二次的著作物が利用される場合、その原著作物も利用されるという関係性が生じるため、二次的著作物の利用に関しては、原著作物の著作者が、当該二次的著作物の著作者と同じ内容の権利を専有する旨を規定したものです。

例えば、出版社の丙が翻訳物bを複製して出版することを希望した場合、丙は二次的著作物の著作者である翻訳家乙から許諾を得るのはもちろんのこと、翻訳物bの原著作物aに係る原著作者の作家甲からも、併せて許諾を得る必要があります。

なお、27条の規定に反して、仮に翻訳家乙が作家甲の許諾を得ることなく無断で翻訳した場合でも、作家甲は28条の規定に基づき、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利を専有することになります。