スペインにおける「ドーナツ」紛争と商標の記述的使用の是非

スペインにおいて、「donut」の文字をウェブサイト上で商品説明のために使用してドーナツを販売していたAtlanta Restauración Temática, S.L.(アトランタ・レスタウラシオン・テマティカ社)に対し、「donuts」の文字を含む登録商標(第30類のベーカリーやペストリー等を指定)を多数保有するBIMBO DONUTS IBERIA S.A.(ビンボ ドーナツ イベリア社)のグループ傘下にあるBakery Donuts Iberia S.A.U,(ベーカリー・ドーナツ・イベリア社)が提起していた商標権侵害訴訟において、アトランタ・レスタウラシオン・テマティカ社による「donut」の文字の使用が商標権侵害に該当する旨の判決が下されたというニュースがありました。

<日本貿易振興機構(JETRO) HPより)> ビジネス短信 スペイン最高裁が「Donut」使用にストップ

スペイン最高裁判所よれば、辞書に「donut」が掲載されていることが「donut」を一般名称化させるものではなく、商標の排他性や独自性を制限するものでもないこと、スペイン商標法第35条に、辞書や百科事典が商標を一般商標として提示した場合、出版者は権利者の要請により、それが登録商標であることを示す注記を追加しなければならないと明記されていること、さらに、アトランタ・レスタウラシオン・テマティカ社側が、「donut」ではなく他の記述的な代替名(例えば、スペイン語でリング状のペストリーを意味する「rosquillas」など)を使うことができたことなどを挙げ、たとえ説明目的で使う場合でも「公正な商業慣行」に沿う必要があると判示されました。

<European Commission HPより> Spanish Supreme Court backs Bimbo: ‘Donut’ is not a generic term – EU trademark dispute: OWN and genuine use of a trademark

他方、日本においては、商標法26条1項6号において、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」には商標権の効力が及ばない旨が規定されており、いわゆる商標的使用論として知られています。例えば、他社の登録商標の使用であっても、商品についての記述や説明に過ぎない場合には、当該使用は商標の本来的な機能である自他商品役務識別機能や出所表示機能を発揮しているとはいえないため、実質的に商標としての使用には当たらないと判断されることになり、裁判実務においても定着していますが、上記の判例にもある通り、他国においてはリスクが生じる場合もあります。したがって、海外でビジネスを展開する場合には、各国における商標法や最新の判例に注意する必要があると言えます。